大規模修繕工事の「設計監理方式」と「責任施工方式」どちらを選ぶべきか?【徹底比較】

マンションの大規模修繕工事を進める際、管理組合が最初に悩むのが「設計監理方式」か「責任施工方式」かという選択です。
どちらも一般的な発注形態ですが、コスト・品質・透明性のバランスが大きく異なります。
本記事では、両方式の特徴とメリット・デメリットを比較し、管理組合が失敗しない選び方を解説します。


1. 2つの方式の基本的な違い

項目 設計監理方式 責任施工方式
体制 設計者(コンサル)と施工者を分離 設計と施工を同一会社が担当
見積り 複数施工会社の競争入札 特定会社の見積りで確定
品質管理 第三者(設計監理者)が監理 施工会社の自己監理
コスト管理 数量・単価を明示し透明性が高い 内訳が不明瞭な場合が多い
責任の所在 設計者=設計責任、施工者=施工責任 施工会社に一括責任

一言でまとめると、設計監理方式は「第三者が品質・価格をチェックする方式」、責任施工方式は「施工会社任せの一括請負方式」です。
では、どちらが管理組合にとって有利なのでしょうか。


2. 設計監理方式の特徴とメリット・デメリット

■ メリット

  • 数量・単価が明確で、見積り比較が公平にできる
  • 中立の設計監理者が品質とコストを客観的にチェック
  • 不適切な工事・手抜きを防止できる
  • 合意形成がしやすく、住民説明に説得力がある

■ デメリット

  • 設計監理費用が別途発生(工事費の約5〜8%)
  • 設計・入札・監理に時間を要する

つまり、設計監理方式は「透明性と品質重視」の発注形態です。
第三者の立場で建物診断・数量拾い・見積り比較を行うため、長期的に見ればコストの最適化につながります。
詳細は 設計監理ページ にて詳しく紹介しています。


3. 責任施工方式の特徴とメリット・デメリット

■ メリット

  • 設計から施工まで一括で依頼できるため手間が少ない
  • スピーディーに着工できる
  • 初期費用(設計料)が抑えられる場合がある

■ デメリット

  • 数量・単価の内訳が不明確になりやすい
  • 工事品質を第三者が確認できない
  • 他社との価格比較ができず、割高になるリスク
  • 施工会社の利益優先になりがち

責任施工方式は「スピードと簡便さ」を重視する一方で、透明性・品質保証が弱点です。
管理組合が工事内容を十分に理解しないまま契約すると、結果的にコスト高や施工トラブルにつながることもあります。


4. 実際の比較:コストとトラブル発生率

センターオフィスが支援した複数の修繕事例によると、責任施工方式より設計監理方式のほうが、平均で10〜15%コストを抑えられたという結果が出ています。
理由は、数量根拠の明確化と競争入札による適正価格の実現です。

実例比較

項目 設計監理方式 責任施工方式
総工事費(100戸規模) 約3億2,000万円 約3億7,000万円
トラブル件数 軽微(定期報告で是正) 多発(施工後クレーム対応)
住民満足度 高い(説明が明確) 低い(情報不足)

結果的に、「コスト+品質+合意形成」の観点では、設計監理方式が優位であるといえます。
→ 関連:支援事例ページ


5. 管理組合が選ぶ際の判断基準

① 修繕の目的が明確か

「外壁をきれいにしたい」だけでなく、「耐久性を高めたい」「漏水を防ぎたい」などの目的を明確化することで、方式の選択も自ずと決まります。
目的が明確な場合は、仕様と品質を重視できる設計監理方式が有効です。

② 管理組合の関与度合い

「時間と人手をかけて丁寧に検討したい」場合は設計監理方式、
「早く進めたい」「細部は業者に任せたい」場合は責任施工方式が向いています。
ただし、後者は長期的なリスクを十分理解したうえで選択することが大切です。

③ 将来的な資産価値の維持

短期的なコスト削減よりも、長期的な品質維持を重視するなら、設計監理方式の方が合理的です。
第三者監理により品質が保証されるため、資産価値の維持にもつながります。


6. まとめ:中立性と透明性が未来の安心につながる

設計監理方式は、手間と時間はかかりますが、最終的には品質・コスト・納得感のバランスが取れる方式です。
責任施工方式は短期的には手軽でも、後の不具合・追加費用リスクを抱えやすい点に注意が必要です。

センターオフィスでは、建物劣化診断長期修繕計画の見直し設計監理施工会社選定支援を通じ、中立で透明な大規模修繕の実現をサポートしています。


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