給排水設備工事を始める前に|管理組合が押さえておきたい事前確認と注意点

マンションの長寿命化に欠かせない「給排水設備工事」。
外壁や防水の修繕に比べ、住民の生活に直接影響するため、慎重な準備と合意形成が求められます。
この記事では、管理組合が給排水設備工事を行う前に確認しておくべき項目と、よくある注意点を専門的な視点で解説します。


1. なぜ給排水設備工事が重要なのか

給排水設備は、マンションの「見えないインフラ」です。
外壁や屋上のように目に見える劣化ではなく、配管内部で静かに進行するため、気づいたときには漏水や腐食が深刻化しているケースも少なくありません。

特に築25年以上のマンションでは、次のような症状が見られたら注意が必要です。

  • 給水管の赤水・濁り・臭い
  • 排水管の詰まり・流れが悪い
  • 天井裏や床下での漏水跡
  • 給湯温度の不安定化

これらの症状を放置すると、漏水事故・居室被害・二次的な構造腐食へと発展します。
したがって、外壁修繕と並行して給排水設備も定期的に点検・更新計画を立てることが重要です。
詳細は 建物劣化診断 ページでも紹介しています。


2. 工事を始める前に確認すべき5つのポイント

① 現状調査と配管診断の実施

まずは現状を正確に把握することが第一歩です。
配管の材質(鋼管・銅管・ライニング鋼管・塩ビ管など)や経年劣化の状況を、内視鏡検査・サンプリング・水質分析などで確認します。
診断結果によって、「更生(ライニング再生)」か「更新(配管取替)」かを判断します。
→ 参考:長期修繕計画の見直し

② 工法の選定:更生工事と更新工事の違い

工法は大きく分けて2種類です。

  • 更生工事(ライニング工法):既存配管の内面を洗浄・樹脂塗布して延命する方法。工期・費用を抑えやすいが、劣化が進行している場合は効果が限定的。
  • 更新工事:古い配管を撤去し、新しい配管に入れ替える方法。初期費用は高いが、根本的な改善が可能。

建物の築年数・配管経路・劣化状況によって最適な方法を選択します。
センターオフィスでは、各工法の比較表を提示し、費用・耐用年数・施工リスクを総合的に判断できるよう支援しています。

③ 居住者への影響と工期計画

給排水工事は、室内に立ち入る工事が発生する場合があります。
特に専有部の給水・排水管を取り替える場合、キッチン・浴室・トイレなどへの影響を事前に説明し、住民の理解を得ることが不可欠です。
工期中の生活制限を最小限に抑えるため、日程や工事時間帯を明確に計画しましょう。

④ 工事費と見積り内容の確認

給排水工事は建物ごとに条件が大きく異なるため、見積書の比較が難しい工事です。
以下の項目を重点的にチェックしましょう。

  • 仮設・撤去・復旧費が含まれているか
  • 更生工法の場合、保証年数と施工範囲が明示されているか
  • 更新工法の場合、室内復旧範囲(クロス・床補修など)が明確か
  • 水圧試験・衛生検査費が含まれているか

見積りの整合性を確認するには、見積り査定サービス の利用が効果的です。

⑤ 設計・監理体制の確認

設備工事は専門性が高く、設計・監理者の技術力が成果を左右します。
中立的な立場で数量・仕様・施工手順をチェックできる第三者コンサルタント(設計監理者)を選ぶことが望ましいです。
詳しくは 設計監理サービス をご覧ください。


3. 管理組合が注意すべき3つのリスク

① 無断で仕様変更されるリスク

現場で「同等品」と称して安価な部材に変更されるケースがあります。
設計監理者がいない場合、工事後に発覚しても修正が困難です。
→ 対策:工事中の定期監理・報告体制を設ける。

② 居住者対応トラブル

工事説明が不十分だと、「水が出ない」「工期が長い」などクレームが発生します。
工事前に住民説明会を開催し、スケジュール・注意事項・補償対応を明示しておきましょう。

③ 不具合の早期再発

特に更生工法では、洗浄不足や塗膜不良が原因で再劣化することがあります。
保証内容(期間・範囲・再施工条件)を契約前に文書化することが必須です。


4. 工事を成功させるための進め方

  1. 劣化診断を実施して現状把握
  2. 工法(更生 or 更新)を比較検討
  3. 設計仕様書・数量書を整備
  4. 複数社から見積りを取得・査定
  5. 施工会社を選定(中立な立場で評価)
  6. 工事監理完了検査を実施

センターオフィスでは、長期修繕計画の見直しと連動させた給排水設備工事の支援を行い、資金計画・施工品質・合意形成をトータルでサポートしています。


5. まとめ:見えない設備こそ「見える化」を

給排水設備工事は、外壁工事よりも住民生活に密接に関わる重要な工事です。
だからこそ、「劣化状況」「工法選定」「見積り根拠」「保証内容」などを見える化することが成功の鍵です。
管理組合が主体的に判断し、専門家と協働することで、トラブルを防ぎつつ安心して更新工事を進められます。

センターオフィスでは、東京・神奈川・千葉を中心に、建物劣化診断設計監理見積り査定・施工会社選定支援を行い、給排水工事を含む大規模修繕の中立的なサポートを提供しています。


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